【04】『モモ』レポート

鈴木陵

この感覚はなんだろう。レポートを書くにあたって『モモ』の具体的なエピソードを引っ張ってきて何かを言おう、という感じにならない。でも作品自体が腹の底に居座り続けている感じがある。過去にゼミで読んだ本の場合も、自分の中に居座っている感覚は残っている。けれど、今回はまた少し違う。日頃見る街の風景に『モモ』の世界が重なって見える。ベッポが目の前の橋を掃除しているような、モモがぼくの隣にいるような、灰色の男がそばのビルの屋上から見下ろしているような、そんな感覚になることがある。まるで『モモ』の登場人物がぼくの中に「居ついた」ような感じだ。

ゼミ当日のことで思い起こされるのは、『モモ』のカバーを3冊並べて表面・裏面・背表紙を合わせると1枚の絵として成立すると気づいた場面だ。エンデは、章の構成・タイトル、挿絵だけでなく、装丁にもこだわっていた。そんな風に思うと、エンデが『モモ』に託した強烈な意思のようなものを感じる。だからだろうか、ゼミの途中ぐーっと場のエネルギーが高まっていっていたとき、エンデがその場にいるような、むしろ「エンデが場に乗り移っている」ような感覚にもなった。ちょっと不気味な感じもするけど、エンデと真剣勝負ができた気がする。こうやって本を読むのはほんとうにおもしろい。 
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